2006年の東京に蘇るオルタネイト
[2006-09-22, sanae kimura]
音楽について語る時の表現に「十年一昔」というものがある。
今年の<sonarsound tokyo 2006>の2日目、ヘッドライナーがAltern8(オルタネイト)だと聞いて一番に考えたのがその言葉だった。<sónar>といえば、革新的なクラブ・ミュージックを紹介するショーケースの代名詞でもある。そこに彼らが出るということはつまり、彼らの音を「新しい」と感じられる時代がまた巡ってきたということなのだろう。ここ数年、レコード屋でも1990年代のヒット曲をネタにした新作が多いような印象を受ける。このタイミングで彼らがやってくるのはなかなか興味深いと思うのだ。別に懐古主義などではない。あの熱狂と興奮がまた感じられると感慨深く思う一方で、90年代を知らない世代がどんな風に捉えるのか、聴いた後でどんな音が生み出されていくのかという期待感も大きいからだ。
マーク・アーチャーとクリス・ピートによるオルタネイトが活躍したのは、1990年前後にイギリスを中心に広がったレイヴ・パーティだった。パーティを取り締まろうとする警察に対して、口コミだけで人を集める場所もオーガナイザーの素性も明かされない違法パーティ。そんな中で彼らは黄色いマスクと頭まですっぽりと被ったフード付パーカを目印に活動した。匿名というレイヴの心意気を体現したかのような姿は、当時の私たちにとてつもない格好良さを感じさせてくれた。ハードコア・レイヴ・サウンドの地位を確立し、いつの間にかUKのダンスチャートを席巻するほどになっていた曲は“とにかくアッパー! とにかく格好いい!”
アルバムこそ1枚しか出なかったが、時にブレイクビーツやラガテイストを加えつつ、アッパーなシンセをメインにレイヴ・アンセムを多く打ち出した。その独特の存在感はUKのみならず、遠く海を越え日本にまでも影響を与えたのである。レイヴ・カルチャーのアイコンとして、私たちに衝撃を放ってから約10年。ニュー・スクールブレイクスを通過した後の音を聴くのは初めてだが、今この東京で再び、あの血が騒ぐ興奮を体験できるなんて嘘のようだと思う。
木村早苗(フリーライター)
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